株式会社における重要な業務執行の決定

2017-09-08

会社の機関設計において、監査役会設置会社を採用した場合、取締役会を設置しなければなりません(会社法327条1項2号)。
そして、取締役会設置会社においては、取締役会において重要な業務執行の決定をする必要があります。
重要な業務執行の決定については取締役に委任することはできません(会社法362条4項)。
従って、監査役会設置会社は、取締役会に上程する議題が多くなるという問題が生じています。
また、何が「重要な業務執行」に該当するのか、一義的な基準がないため、基準を明確にすべきとの議論が従前から上がっています。

以下、平成29年8月28日付日本経済新聞より、引用。
「監査役会を置く企業で不満が多いのは、取締役会に上程する付議事項の多さだ。監査役を置かない委員会型の企業では、業務執行を担う役員などへの大幅な権限委譲が可能で、取締役会は監督機能に徹することが容易。ところが監査役会設置会社では会社法上、取締役会が重要な業務執行の決定をしなければならず、権限委譲は限定的だ。企業法務の専門家の間では、何が「重要な業務執行」にあたるのか、その線引きについて議論されてきた。「総資産の100分の1程度でも重要業務になりうるとした最高裁判例があり、この数字が実務で定着したが明確な基準はない」(東京大学の田中亘教授)
国際競争が激しくなるなか「しゃくし定規の解釈は機動的な業務執行の妨げになる」として基準の明確化や法文の見直しを求める向きもある。次の会社法改正案を話し合う法制審議会(法相の諮問機関)でもテーマに浮上している。「制度間競争を実現するため、機関設計(統治モデル)にかかわらず同一の基準を認めるべきだ」との意見と、「監査役会設置会社が委員会型に移行すれば足りる」と現状維持を求める意見の賛否両論があり、着地点はまだ見えない。」