営業譲渡について

1 営業譲渡とは

営業譲渡(事業譲渡)とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値ある事実関係を含む)の全部又は重要な一部の譲渡であり、これによって譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社からの譲渡の限度に応じ法律上当然に会社法21条に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいいます(最高裁判所昭和40年9月22日判決)。

 

2 営業譲渡契約のメリットとデメリット

(1)メリット

営業譲渡契約のメリットは、契約の当事者間で、譲渡の対象となる事業の範囲や資産、負債の範囲を自由に取り決めることができるという柔軟性にあります。

譲渡会社からすれば、自社に残したい事業のみを残し、不採算部門を譲渡することで、財務状況を改善できるメリットがありますし、逆に、譲受会社からすれば譲渡会社の良い部分のみの譲渡を受けるという契約も可能です。

 

(2)デメリット

他方、デメリットとしては、譲渡会社が有して契約関係(取引先、従業員)が当然に譲受会社に移転するわけではないので、個別に契約を締結し直す必要があるという煩雑さにあります。

場合によっては、重要な人材が譲受会社と契約せず、退職してしまうというリスクもあります。

 

3 営業譲渡のトラブル事例

営業を譲渡しようとする会社が債務超過の状態にある場合、負債や不採算部門だけを残し、優良な事業部門のみを事業譲渡するケースがあります。

この場合、譲渡会社の債権者から、当該事業譲渡が責任財産を散逸するもので詐害行為としてみられ、譲り受けた会社が債権者から、事業譲渡契約の詐害行為取消請求を受けるというトラブルが生じ得ます。

また、譲渡後、譲渡会社が破産してしまった場合にも、破産直前の事業譲渡が破産管財人により否認されてしまい、譲受会社が譲り受けた事業を返還しなければならないというトラブルに発展することも考えられます。

 

4 弁護士に事業譲渡の代理を依頼することのメリット

弁護士に事業譲渡の代理を依頼することで、事業譲渡契約を締結することによる法的リスクを知ること、トラブルを回避することが可能となります。

上記に述べた、①詐害行為取消しのリスク、②否認リスク以外にも、③譲受会社が同一の市区町村で競業禁止義務を負ったり、また、④譲渡会社の債務を承継してしまうケースもあります。

事業譲渡の契約を締結するにあたっては、弁護士が代理することで、譲渡会社、譲受会社にとって、どのようなリスクがあるかを事前に把握することができ、後のトラブルや予期せぬ損害を回避することが可能となります。

事業譲渡のメリットを最大限に享受する上で弁護士の代理は、有益なものになります。

 

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