転籍無効の判決について(分社化をした上で解雇を行った事案)

2017-04-04

分社化により、新会社に転籍した後に解雇された者が、転籍の無効を求めた訴訟に関し、東京地裁において、法律が定める事前の協議が不十分であり、転籍は無効とする旨の判決が下されました。

商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号)は、会社は、承継される事業に従事している労働者と、会社分割に伴う労働契約の承継に関し、協議をすることを求めています(同法5条)。そして、協議が行われても、その程度が著しく不十分であれば、当該労働者は、労働契約承継の効力を争うことが可能です(最高裁判所平成22年7月12日判決、労判1010号5頁)。すなわち、分割会社に対して労働契約上の地位の確認の訴えを提起することができ、当該判決も、かかる最高裁判例の考えに基づくものと思われます。

 

以下、平成29年4月3日付日本経済新聞(朝刊)より、引用。

神奈川県厚木市の男性(54)が転籍の無効を求めた訴訟の判決で、東京地裁(湯川克彦裁判長)は28日、「法律が定める事前の協議が不十分で、転籍は無効」と判断した。

判決などによると、男性は化粧品会社「エイボン・プロダクツ」(東京・新宿)の厚木工場に勤務していたが、同社が2012年に会社分割の手法で同工場を子会社化したことに伴い、約200人とともに転籍した。その後、子会社が解散し、男性は解雇された。

湯川裁判長は判決理由で「会社は会社分割の大まかな説明をしたが、転籍の希望に関する個別の話し合いは不十分だった」と判断した。判例では、会社分割の際に社員との事前の協議が不十分な場合、転籍が無効となり得るとされている。

判決は男性がエイボン社員であることも認め、未払い賃金の支払いを命じた。判決後に記者会見した男性の代理人弁護士は「人員削減を目的とした分社化を防ぐことにつながる判決だ」とした。

同社は「正式な判決文を受け取っていないためコメントは差し控える」としている。